調律

調律の仕方、コツなどをわかりやすくご説明します。

調律のタイミング

この楽器は、定期的に調律しなければなりません。 ただし、「調律」といっても、ピアノほど大袈裟なものではありません。 ちょっとしたコツは必要ですが、慣れればとても簡単な作業です。

トーンバーは、上段下段合わせて42本もあるので、すごく時間が掛かりそうに思います。 例えば、1本につき1分だとしたら、42分も掛かってしまう計算です。

しかし、実際はそんなに掛かりません。 それは、弾く頻度の少ない上段はそれほど音程のズレが無いので、確認程度で済むことがほとんどだからです。 また、弾く頻度の多い下段のトーンバーでも、全てというわけではありません。 ただ、中低音域よりも高音域のトーンバーのほうがズレやすいという傾向はあります。

どうやら、「調律の頻度」というのは、弾く回数と強さに比例するようです。

そもそもこの楽器は、そんなに大きな音を出すものではありません。 適度な強さで弾いてこそ、最高のポテンシャルを引き出すことができるのです。

ちなみに、私は1日数時間毎日のように弾いていますが、3ヶ月以上も調律をしません。 調律したとしても、5分も掛かりません。 確かに、慣れているというのもあるかもしれません。 しかし、それよりも調律しなくて済むようなチカラ加減で弾いているということが大事なのです。 動画をみていただければわかるのですが、決して軽くは弾いていません。 しっかりと、トーンバーを響かせるように弾いています。

調律の仕方

それでは、さっそく調律方法を順を追ってご説明いたします。

準備

まず、以下のものを用意します。

  • マット(タオル、ランチョンマットでも可)
  • チューナー(安価なギター用のチューナーで充分)
  • トーンバー押し(木やプラスチックなどの適度な硬さのもの)
  • 小型のハンマー

マットの上に置く

テーブルや、楽器の裏板が傷つくのを防ぎます。

このように横向きに置くと作業がし易いように思います。

滑り止めシリコンゴムのような素材のマットは、このように上に乗せただけで裏板にマットの模様が付くものがあります。

チューナー

チューナーの入力に、ピエゾ(振動)とマイクの切り替えがある場合、ピエゾに設定します。 ただし、チューナーによっては、マイクのほうが良い場合もあります。

〇 チューナは、調律作業の邪魔にならない位置に置きます。 振動はテーブルにも伝わるので、これでも充分に音が拾えます。

〇 表板の上に乗せた板に挟む方法もあります。

× ブリッジ部分に挟むのは絶対にダメです。 挟む位置や挟み方によっては、ブリッジに取り返しのつかないダメージを与えてしまうことがあります。

音程を合わせる

音程を合わせるのは、チューナーの針やインジケーターを見ながら行います。 一度すべてのトーンバーを合わせ終わったあとに、もう一度すべてのトーンバーを確認します。 再度確認するのは、目的のトーンバーを合わせている時に、うっかり隣のトーンバーを触っていることがあるからです。

弾く側を押すと音が高くなります。

反対側を押すと音が低くなります。

この押すときに使うものは、適度に柔らかい材質のものなら何でも構いません。 ただし、金属などの硬いものは、トーンバーに傷が付くことがあります。 木やプラスチックなどがペストです。

最初の頃、私は割り箸ほどの細い木の棒を使っていました。 しかし、棒状のものはチカラが入らず使いにくいのです。 このような変な形になっていったのも試行錯誤の結果です。

ハンマーを使う

使わなくてもできるのですが、使えばさらに微調整がしやすくなります。 下の説明で「叩く」とは言っていますが、チカラを入れずに、ほんの軽くあてる程度で充分です。

このように、小型のプラスチック製がおすすめです。 金属製のものを使う場合は、うっかりトーンバーやボディを傷つけてしまうこともあるので、細心の注意を払う必要があります。

トーンバーを直接叩けないこともないのですが、うっかり隣りのトーンバーにあたってしまうことがあります。 このように持てば、確実に安定して叩くことができます。

反対側は狭いので、トーンバーを直接叩くことはできません。 この「トーンバー押し」は絶対に必要です。

コツ

この楽器の音は、倍音や共振、共鳴の音が非常に多く、それが豊かな響きを生み出します。 しかし、不都合なことに、チューナーはそれらの音をとてもよく拾ってしまいます。

例えば「 C 」で合っているトーンバーなのに、「 F 」や「 G# 」なども同じくらいの頻度で表示されることがよくあります。 この現象は、低音域で多く、高音域ではそれほど起きません。

そこで、目的のトーンバー以外のトーンバーを指や手の平などで軽く触れながら行うことで、目的の音が表示される確率をほんの少しだけ上げられるような気がします。 それでも、なかなか本来の音程が表示されないこともありますが、根気よく何度も鳴らしながら合わせていきます。

いちばん低い音のトーンバーは2mm、いちばん高い音のトーンバーでは0.5mmの移動で半音ほどの音程がズレます。 つまり、高い音のトーンバー程、微妙なチカラ加減が必要になるということです。 慣れないと、つい押しすぎてしまうこともあります。 弾く側とその反対側を、交互に何度も何度も何度も、行ったり来たりしなくてはいけないかもしれません。 しかし、だんだんとコツがつかめ、短時間で合わせられるようになっていきます。

私もそうですが、どうしてもチューナーの針やインジケータが丁度を示す位置に合わせたくなるものです。 しかし、超アナログの極みのような、この楽器は、気温や湿度だけではなく、弾き方や強さなどでも微妙に音程は変わるものです。 だから、それほど神経質になる必要もないのかもしれません。 と言うのが、いちばんのコツかもしれません。

間隔調整

トーンバーは、2mmの隙間で等間隔に並んでいるからこそ美しいのです。

調律を何度も繰り返していると、いつのまにかトーンバーは横方向にも移動して、間隔が広くなったり狭くなったりと、均等でなくなってしまいます。 それは、見た目だけではなく、弾きにくさの原因にもなります。

アルミ製のトーンバー間隔調整器具です。 両手に持てば、持ち替える面倒がなくなります。

これも「器具」と言えるほどのものではありません。 厚さ1mmのアルミの薄板を加工したものです。 この変な形も、それなりの試行錯誤の結果です。

以前は、親指以外の指の爪、トーンバーの切れ端、マイナスドライバーなどを使っていました。 しかし、いちばん手近で使い易いのが、丁度よく伸びた親指の爪なのです。 案の定、爪は傷が付いたり、折れたりと、お決まりのパターンです。

〇 間隔調整器具の先端にある凹んだ部分を固定棒に沿わせて、トーンバーを移動させます。

〇 間隔調整器具の平らな部分で、トーンバーを移動させます。

× 固定板に指を掛けるのは絶対にダメです。
トーンバーを支えている固定棒が抜けてしまうかもしれません。

これも調律と同様で、神経質に行うと、キリがありません。 それよりも、間隔調整することで、調律が微妙にズレることがあります。 最初は、調律と間隔調整を繰り返すことになるかもしれません。 しかし、慣れてくれば調律のときの押す方向や角度で、間隔調整も同時にできるようになります。

やってはダメなこと

この楽器にとってトーンバーは、最も大切な部分であり、慎重に取り扱う必要があります。

ペンチを使う

調律や間隔調整など、ペンチで挟んだほうが手っ取り早いと考えがちです。

× ペンチは絶対に使ってはいけません。

挟む部分がプラスチックの、このようなペンチもあるのですが、トーンバーを挟むことは余程のことがない限りしてはいけません。

弾く部分はとても繊細です。 絶妙な曲面や角度で、しかも丹念に磨き上げています。

この部分をペンチで傷つけたり、変形させてしまうと、爪が引っ掛かったり、爪の摩耗を早めてしまいます。 親指の爪は、最も重要なこの楽器の一部です。 また、トーンバーの高さが変わってしまい、弾き易さが失われてしまうかもしれません。

では、反対側はどうでしょうか。

この部分も傷がつくと見栄えがよくありません。 傷はサビの原因にもなります。

トーンバーを外す

トーンバーは余程のことがない限り外してはいけません。

固定棒で挟んで固定しているだけなので、ペンチなどを使えば簡単に抜き取ることができます。 しかし、それを再度取り付けるのは、けっして容易なことではありません。 たとえ、元のように取り付けることができたとしても、弾き易さも元に戻るとは限りません。 つまり、一度外したトーンバーは、取り付けても同じ高さにはならないということです。

低音部から高音部にかけて、なだらかに高さを下げていく絶妙な「ハ」の字型の調整です。

このトーンバーの高さ調整こそが、弾き易さを決定します。 爪をスライドさせてのコードや、速弾きなどのテクニックも、この調整しだいと言えます。

取り付けたばかりのトーンバーは高さがバラバラです。

私は、42本もあるトーンバーでも10分ほどで取り付けることができます。 しかし、この高さ調整は、納得ができるまでに何時間も掛けています。

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